Secret love.
それから30分程話もせず、時々スマホを見たり追加の飲み物買ってきたりして時間を潰していると、及川くんの仕事が終わった様で帰り支度をしていた。


「終わった?」

「おまたせ。タクシー呼ぶ。」

「何で?歩いて帰ろうよ。もったいないし。」

「忘れた?これ。」


そう言いながらパーカーを引っ張っている。確かに誰にも見せたくないとは言っていたけど、だからってタクシーって…と、及川くんの顔を見ると冗談を言っている感じはしない。


「…タクシーの運転手さんにはどうせ見られるよ。」

「複数人に見られるよりはマシ。後、早く帰りたいから、今日はタクシー。」


そう言ってスマホで素早く手配をしてしまう。変な独占欲があるなとは思うけれど、そんな事を言えば軽く喧嘩してしまいそうなので口を噤んで、及川くんの言う通りにする。

及川くんの方を見ていると、及川くんもこちらを見て少し微笑むとそっと抱き寄せてそのまま額に口付けてくる。


「会社でこんなことしてると思ったら背徳感すげぇな。」

「最近こういうことになる頻度多いけどね。」

「いちいち覚えてないし。」

「都合の良い頭。」


丁度くっついてそう話している時に足音が聞こえてきて、すぐに体を離して私はしゃがみ込む。誰も来ないと油断していたけれど、いつ誰が来ても可笑しくない。

徐々にその足音は近付いてきて、営業部のオフィスのドアが回る音がした。
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