Secret love.
及川くんが耳元まで顔を寄せてくると「今日、部屋来る?」と囁いてくる。


「行かないってば…!」

「来てくんないの?」

「そんな可愛く言ってもだめ!」

「はあ?それしか楽しみに来てないんですけど。つまんねー。」


何を勝手にあてにして楽しみにしてやがんだ、この男は。

すっかり及川くんの気分が萎えてしまっていて、肘で軽く突く。


「誰かに部屋入る所見られたらどうすんの。」

「見られたらその時なんじゃね?もはや。」

「及川くんが隠したいって言ってるんじゃんか。」

「何とでも言い訳できるよ。」


この男は相変わらず、危険な賭けをしようとしていて見られて言い訳したとしても噂になってしまえばおしまいだと分かっていない。噂なんて一瞬で広まるし、そのまま沈静化させるのも厳しい。

結婚するまでは噂の的にもなりたくないし、お互いが本当に結婚相手で良いのか見極めるために1年秘密にしながら交際を続けている。それなのに及川くんはバレてもいいという態度を取っている様な気がする。


「及川くん。あの約束は何だったの。」

「何か、格好付けて待つみたいな事言ったけど、見つかったらすぐに結婚してくれるかなとかずるいこと考えてるだけ。」

「…バカだね?」

「優花の事になると脳溶けるんだな、俺。知らなかったわ。」


近くに人が居ないのを良い事に好き勝手言っていて顔が熱くなる。5年目の記念日と聞いていたし、私ももうそこでと思っているから、結婚時期は早めたくない。

記念日とか特別な事が無ければすぐにでも婚姻届けを出しに行くことに賛成していたと思う。
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