Secret love.
「後もう少しね。」


後1年もしない内に私は及川になる。確かに待ち遠しいと思ってしまうけれど、このドキドキしながら待つ時間、実は嫌いじゃないのだ。


「それと、いつになったら及川くん呼び卒業してくれる?」

「…それも結婚してから考えます。」

「はあ?何で?」


また何でとか言って不満げな及川くん。いつも私の言う事には不満と疑問が出て来るらしい。素直に受け止める事は出来ないらしい。


「今呼び方変えて会社で間違えて呼んじゃったら大変だよ。後出会ってからずっと及川くん呼びだから今は呼び方変えるの恥ずかしい。」

「いつか優花も及川になるのに?」

「誰に聞かれてるか分かんないところでそう言う事言うなっての!」


今更なツッコミな気がするけれど、人通りが少しずつ増えてくるような場所に出てきても、際どい状況での発言が止まらない及川くんに軽く注意をする。

誰かに聞かれたら一発アウトなのに会話を止めない男。

ソフトクリームが売っているお店に一緒に並んで、約束通り購入してもらう。


「温泉入った後に食べたかった。」

「我儘お嬢様過ぎない?」

「嘘。ありがとう、及川くん。」


そう言って笑うと、及川くんも少し笑い返してくれる。それから腕時計を見てから「そろそろ戻んなきゃね。夜の宴会もあるし。」と言っていた。

今日の宴会は正直気が重い。それに会社の飲み会は特に。いつも部署別で飲み会を開く為、あまり大きな規模では無いのだけど、こういう機会と忘年会、新年会は会社全体での大きな飲み会になる。

毎年私自身飲まされた経験もあるし、及川くんが毎年お酌だなんだと言いながら女性社員に絡まれているのも見なければいけない。良い事が1つも無い。

今回の社員旅行に関しては会社からお金が出ているけれど、忘年会新年会に関しては実費である。その上、集まりにはほぼ強制参加なのだから、増々嫌になる。
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