Secret love.
そのまま部屋に着くとそのまま離れようとした。


「じゃあ、ゆっくりしてね。」

「…帰さないけど。」

「帰さないって…っ!?」


話している途中で部屋に引き込まれて、そのまま玄関先で壁に押し付けられる。至近距離で目が合うと怒っている様なそんな顔。

どうしてそんな顔をしているのか分からなくて、首を傾げても及川くんは何も言わない。


「あ、アイス、溶けちゃう。冷凍庫入れる?」

「どうでも良いし。それよりもさっきの説明してよ。」

「何の話してるか分からないんだけど!」

「分からないわけねぇだろ。ここ、誰の手に触られたの?」


ここ、というのはお腹に触れていて、先程太一に助けられたのを見ていて何か誤解されているのだと思う。

慌てて首を横に振り「違う」と弁明をしようとしても、及川くんはあまり聞いてくれるような感じがしない。

私の首筋に思い切り噛みついてきて痛みが走る。「痛い!」と言った時には多分既に首筋には歯形が付いていて、及川くんはその個所を見て優しく手でなぞる。


「…太一は、助けてくれただけだよ。」

「それも気に入らない。何で俺は及川くんで、あいつは名前呼びなの。」

「それは…、そう呼んできた回数が違うから…。」

「関係ねぇから。呼べよ、歩って。」


こんな嫉妬全開な及川くん今までにいなかったと思う。そもそもこんなに嫉妬する人だなんて知らなかった。

目を合わせると明らかに怒っていて、それなのに触れてくる手は優しくて今は私の手をぎゅっと恋人繋ぎにして壁に縫い付けられている。
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