Excessive love.
 課長は会議室の札を«使用中»に裏返すと、中に入るなり静かに鍵を閉めた。周りに聞かれてはいけないほど、そんなに重大な話なのかと、心臓の鼓動が一段と速くなった。

 課長に「座って」と、促されるまま、私は課長と向かい合うように腰を下ろした。いつになく深刻な課長の表情に、会議室に緊張感が漂う。


「ごめん、絶対聞いちゃいけない話だとは思ったし、首を突っ込むべきではないとは分かっていたけど、どうしても放って置けなくて…」


 その前置きだけで、私は大体を察した。

 先ほどの優花との会話を聞かれていたのだと思う。問題は、どこまで聞かれたか。

 及川くんと優花の関係まで露呈していなければいいけれど、と私は祈るような気持ちで、次の言葉を待った。


「まずは加藤との事大変だったな」

「…ご存知だったんですね、加藤くんと交際していたの」

「そりゃ、話には聞くよ。社員のどこが交際しているのかとか」

「聞いてしまったと言うのは、加藤くんと姫野さんの事、ですよね?」

「そうだな。経理の川﨑さんと新田の話をコーヒー買いに行く時たまたま聞いてしまって…、聞くつもりは無かったけど、聞いたからには少し力になれないかなと思った」


 誰か来ないか気を張っていたつもりだったけれど、課長がいたことには全く気づかなかった。会社という場所でプライベートを曝け出した自分の油断が恐ろしい。

 だけど、話を聞いていても、課長の口から及川くんの名前が出ることはなかった。

 自分の無惨な失恋が白日の下にさらされた恥ずかしさよりも、親友の秘密が露呈せずに済んだ安堵の方が勝ち、私はようやく、固まっていた肩の力を少しだけ抜いた。
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