Excessive love.
「…そもそも、私が仮に隆太を必要としていないとして、あなたは私との関係に蹴りをつける前に誰かと関係を持って良いの?」


 初めて私の声に怒りが宿った。隆太は「でも…」と力なく唇を動かしたが、続く言葉が見つからないのか、そのまま口を噤んだ。


「私に不満があったから浮気したのは分かった。だけど、浮気をした人と関係を持ち続ける気は無いし、その話で長く責める気はない。だから、好きにして。お望み通り別れるから」

「…本当に俺の事好きだった? 浮気でもしたら、怒ってもらえて、もしかしたら少しは好きだって思って貰えてたって思えるんじゃないかと思ってた」

「そんな確かめ方しないでよ。何を言われても今更答える気はない」


 突き放すように言い捨てて、残りの荷物をバッグに押し込む。ジッパーを閉め、立ち上がりバッグを掴んで玄関に向かった。

 住み慣れた家を出る時、一度も後ろは振り返らなかった。
 当然、彼が追いかけてくる気配もない。

 駅へ向かう道すがら、優花にメッセージを送る。すぐに«空いてるよ!»と返信が届き、彼女の最寄り駅近くにあるカフェで待ち合わせることになった。

 夜風に吹かれながら歩いていると、あまり時間も経っていないのに不思議なほど落ち着いていた。裏切られた悲しみがないわけじゃないけれど、思ったよりずっと平気な自分がいる。

 もしかしたら、私も愛情ではなく、ただの情だけでこの関係を繋ぎ止めていただけなのかもしれない。

 今別れたら結婚できなくなるかも。このまま一生ひとりぼっちは嫌だ。そんな打算と臆病さが、彼と離れることを拒んでいた。


(そっか、終わったんだ…)


 今はただ、静かに流れる時間の中に身を置いて、こんがらがった思考を少しずつ解いていきたかった。
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