Excessive love.
Episode4
 それから、穏やかで温かい同居生活が続いて約一ヶ月。

 私と朝倉さんの関係は驚くほど順調で、以前よりもずっと自然に言葉を交わせるようになっていた。

 そして今、私たちは宣言通り社員旅行で温泉街に来ている。

 私と優花が並んで歩き、その数メートル先を朝倉さんと及川くんが歩く。優花は、前を行く及川くんの背中を、まるで穴が開くのではないかというほど見つめていた。


「…優花。そんなにまわりたいならまわれば? 大学から仲良い同期なら別に変じゃないよ…?」

「…でも一緒に居たらさ、手とかも繋ぎたくなるじゃん…。拷問じゃん…」

「欲張りさんなのね」


 親友のそんな姿が可愛くて仕方ない。
 及川くんが彼女を溺愛している理由がよく分かる気がした。

 私がのんびりと抹茶味のたい焼きを頬張っていると、優花は「はぁ…」と深いため息を吐き出し、優花もたい焼きを小さな口で一口噛り付いた。

 相変わらず二人の背中を見つめながら歩いていると、不意に及川くんが振り返った。彼は楽しげに笑うと、隣を歩く朝倉さんの腕を肘で軽く突く。

 何かを揶揄うように囁き終えると、そのまま足早にこちらへ戻ってきた。


「新田さん、交代しない?」

「え?」

「新田さんも、朝倉さんとが良いよね?」

「…及川くんさ、自分が優花とまわりたいだけでしょ」

「川﨑さんは可愛いから、新田さんの代わりに他の男に狙われない様に守らないと。川﨑さんとまわりたい男は他にもいるみたいだし」


 及川くんの視線の先には、確かに遠巻きに優花を気にしている他部署の男性数人の姿があった。

 言葉の裏にある場所を代われという強引で、必死な要求を察して、私は苦笑いを浮かべた。
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