離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
【赤ちゃん、無事に心拍が確認できました! 今度行った時には出産予定日もわかるそうです。母子手帳をもらってきたので、夜に見せますね】
……そうか。無事に正常な妊娠が確認できたんだな。
ホッとするメッセージを目にして、思わず口元がほころぶ。
突然の母親の訪問や四季の妙な態度で朝から疲労を覚えていたが、悠花の言葉で優しく癒されていく。
【それはよかった。体調は?】
束の間の移動時間に、メッセージを送る。
悠花の不調は悪阻によるものだとわかって安心したのはいいが、その症状自体は病気と変わらないので、毎日彼女の様子が気がかりだ。
【実は、あんまりよくないです。匂いづわりというやつらしいんですけど、家の中の色々な匂いが気になって吐き気がするので、ずっとマスクをしています】
【それはつらいな。逆に、この匂いは好きだというものは?】
【柑橘系の匂いですかね……。でも、洗剤の人工的な香りはダメでした】
【自然の香りか。わかった、なにか考えてみる】
今の俺が悠花にできるのは、少しでも妊娠生活を快適に送ってもらえるよう心を砕くことくらいだ。
悠花から感謝のスタンプが届いたのを確認した後、俺は検索アプリに【柑橘 悪阻】と打ち込んで、彼女の役に立ちそうなアイテムを探すことに必死になった。