離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 会社の同じチームのメンバー、そして真木さんや部長だけには、出勤してすぐに妊娠報告をした。

 仕事ができないほど悪阻がひどいわけではないものの、これまでと同じパフォーマンスを保てる自信はなかったし、今後も体調を崩す可能性があるので、伏せておく方が迷惑になると思ってのことだ。

 祝福ムードに包まれる中、皆が私の体を気遣う言葉をかけてくれる。その気持ちが本当にありがたくて、子どもが生まれたら絶対に職場に戻って恩返しをしようと決めた。

 真木さんの反応が少し気になるところではあったけれど、『体のことを一番にね』とごく自然に優しい言葉をかけてもらった。

 彼の態度に警戒心を抱いたこともあったけれど、さすがに妊娠している私にどうこう思うことはないだろう。

 安心して仕事に入ろうとしたところで、葵ちゃんが心配そうな顔で私のデスクにやってくる。

「悪阻、ひどくはなくてもあるんですよね? 悠花さん、すごく痩せましたもん。マスクも匂い対策で?」
「うん。食欲がまったくなくなっちゃったんだよね……。今はレモネードで生きながらえている感じ。家では夫が手作りしてくれてね」

 通っている産婦人科の医師にも相談しているけれど、安定期が近づくにつれ悪阻が落ち着く妊婦が多いとのこと。

 それまでは多少栄養が取れなくても大丈夫だと励ましてもらった。

< 128 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop