離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「えっ。あの財前社長が手作りレモネード? 想像しただけでめっちゃ萌えます」
「ふふ、私も正直、作ってる姿見て萌えてた」
包丁を手に、真剣な顔でレモンの輪切りをする彼の姿を思い出すだけで胸がときめく。
それだけではなく、現在の彼は洗濯や掃除にいたっても完璧にこなし、私が帰った時にはなにもしなくていい環境が整っている。
彼の方が忙しいからたまには私もやると言っているのに、聞く耳を持ってくれないのだ。
「悠花さんが惚気るなんて珍し~。赤ちゃんができて、さらに夫婦愛が深まったんですね」
「というよりも、雨降って、地固まるって感じかな」
妊娠もひとつのきっかけではあったけれど、その前に一度ぶつかり合ったからこそ、今の私たちがある。
しかし、葵ちゃんは当然私たち夫婦の事情を知らないので、あんまりピンと来ないみたいだ。
「えー、全然雨季を感じなかったですけどね。ほら、前の日に旦那さんにめっちゃ愛されたからって、悠花さんすごく眠そうなことあったじゃないですか」
「あ、あれは別にそういうことじゃ……っていうかよく覚えてるね」
「そりゃそうですよ。羨ましいなぁ、私も彼氏欲しいなぁって思ったんですから」
雑談もそこそこに、頭を仕事モードに切り替える。
午前中は体調もよく、サクサクとタスクをこなしていった。