離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「今なら会議室が空いているから、ご案内して話をうかがったら?」
呆然とする私を見かねたのか、真木さんが助け船を出してくれる。私はハッとして、鞠絵さんと目を合わせた。
「はい……。鞠絵さん、こちらです」
動揺しながらもオフィスから会議室へと彼女を案内する。
応接室とは違って座り心地の良いソファなどはないので、中央の大きなテーブルにしまわれていた会議用のキャスター付きチェアを引き、そこに座ってもらう。
「今、お茶をお持ちいたしますね」
「いえ、お構いなく。時間がないので、さっそくお話させてもらってもいいかしら?」
「え、ええ。わかりました」
テーブルを挟んで鞠絵さんと向き合うように、私も椅子に腰を下ろす。彼女は表情をキュッと引き締め、私を真っすぐに見つめた。
「最近、財前社長がとても疲れた顔をいらっしゃいます。心配になってご本人に尋ねたところ、悠花さんからすべての家事を任されていると伺いました」
「えっ……」
色々誤解がありそうだとは思ったけれど、そんなことはしていない、とは言えなかった。
珀人さんが望んでそうしているとはいえ、彼の負担が大きくなっているのは事実だ。