離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
その日の午前中、役職付きの社員ばかりが集まる会議があり、真木さんがずっと不在にしていた。
私たちのチームは新作のリリースに向けた最終調整に追われており、皆忙しなくパソコンの前で作業をしている。
何度かテストプレイを繰り返すことで洗い出された問題点はほぼクリアされており、洗練されたビジュアル、スムーズなプレイ感など、細かい部分ではあるが妥協したくないアプリの細部を、各担当者が調整し、私はそのクオリティをチェックする役割を担っていた。
新しい製品を世に送り出す直前は、いつも緊張する。しかし、プランナーとして企画から携わっているおかげで、どれも我が子のような愛着がある。
こうしたアプリは星の数ほどあるが、どうにか多くの利用者に届き、人生を豊かにするためのささやかなお手伝いができますように。そう願うばかりだ。
昼休みまであと十五分ほどに迫った頃、真木さんが会議から戻ってくる。その表情には少し元気がなく、どうしたのだろうと仕事をしながら思う。
一度自分の席に戻った彼は手に持っていたタブレット等を置くと、浮かない顔のままでこちらにやってきた。
「財前さん、お昼にちょっと時間をもらえる? 食事をしながら話したい」
「……はい、構いませんが」