離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
少し迷ったけれど、この流れではおそらく先ほどの会議でなにかあったようだ。
真木さんとふたりになるとは言っても、どこかで食事をするのであれば危機感を抱く必要はだろう。
珀人さんも、以前のように彼を敵対視するような言動はない。
「食べたいものがあったら……と言っても、今の体調では難しいかな?」
「お気遣いありがとうございます。私は食事という食事はできないのですが、可能であればニンニクなどの強い匂いがしないお店であればありがたいです」
「了解。じゃあ、近場で探しておく。時間になったら出よう」
腕時計を一瞥してそう言った彼が、一旦自分のデスクへ戻っていく。
彼の表情から察するに、あまりいい話ではなさそうだけれど……いったい会議でなにがあったんだろう。
休憩に入るまでの十数分、なんとなくそわそわしながら仕事を進めた。
真木さんに連れられてやってきたのは、落ち着いた雰囲気の蕎麦屋。
そういえば悪阻になってから蕎麦は試していなかったとメニューを眺めながら思い、私は一番シンプルな冷たいもりそばを、真木さんは天ぷらそばを注文した。
いくら悪阻とはいえなにも注文しないのはお店に悪いし、蕎麦屋にはレモネードもない。
「財前さんにも、チームのみんなにも謝らなきゃいけないんだけど……」
料理が出てくるまでの間に、出されたおしぼりで軽く手を拭いてから、真木さんが言いにくそうに話を切り出した。