離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「ハッキリ言うとね、きみたちの新作が出せなくなった」
「十二月頭のリリースを延期する……ということですか?」

 本来であればもう少しゆっくり開発期間を設け、年明けにリリースするのが目標だった。

 そのスケジュールに戻るとしたら、肩透かし感はあるけれど、そのぶん今よりブラッシュアップができる。

「いや、違う。……開発を中止する、という意味だ」
「えっ?」

 予想だにしなかった彼の発言に、耳を疑う。

 アプリ開発の企画が途中で頓挫してしまう経験はこれまでにもあるけれど、企画の最終フェーズと言える現在のような段階で、突然言い渡されるのは初めてだ。

 私たちが今まで頑張ってきたのはなんだったんだろう。真木さんだって悔しいはずだ。

 しばらく沈黙が続いた後、私はなんとか気持ちを持ち直して問いかける。

「詳しいお話を伺ってもいいですか?」
「ああ。実を言うと――」

 彼が語ろうとしたところで、私のもりそばがテーブルに届く。

「お先にどうぞ。俺のは天ぷらだから時間がかかりそうだし」
「……すみません。いただきます」

 もともとそれほどなかった食欲がさらに薄れていたけれど、勧められるがまま、箸を手に取る。冷たい蕎麦やつゆの香りに不快感はなく、少量ずつであればなんとか食べられそうだ。

 小さく音を立ててそばを啜り、ゆっくり咀嚼する。真木さんはそんな私を見ながら、話の続きを語りだした。

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