離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「実を言うと最初から、上の理解は得られていなかった」
ごくん、と飲み下したはずの蕎麦が、胸の辺りで停滞する。
最初から……? いったいどういうこと?
「例の、課金者を優遇するか否かという話があっただろう? 俺としてはきみの意見を通したかったし、子ども向け製品を課金ありきのスタンスで勧めるのには抵抗があったから、強引に作ってしまってから上を納得させればいいと思っていたんだ。なのに、年寄りたちは頭が固くてさ」
鼻で笑うようにハッと息を漏らし、真木さんが苦言を呈す。
しかし、彼が〝きみの意見〟と表現したのは、真木さんのアドバイスがあってのものだったし、彼ならそんな風にごり押しするのではなく、きちんと論理だてて上層部を納得させてくれるものだと信じていた。
あげく、企画が認めてもらえないからと言って、上の立場の人たちを『年寄りたち』だなんて……負け惜しみにしか聞こえない。
裏切られたような思いで絶句していると、真木さんの頼んだ天ぷらそばが運ばれてきた。揚げ物の匂いがむわりと鼻につき、胃がむかむかとしてくる。
「ここまで頑張ったんだからお情けでもリリースさせてくれればいいのに、採算が取れないだろうからと却下。制作にかかった時間と金についてネチネチと詰められて、今後うちの部署で使える予算を減らすとまで通告された。嫌がらせとしか思えないよ」
真木さんはうんざりしたようにため息をつくと、箸を手に取ってそばをズズッと啜る。