離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
これが、彼の本音……なの?
これまで私たちの意見に理解があるように見えたのは部下にいい顔をしたかっただけだけで、上を説得してみせると言いながら、その中身は空っぽだったのだ。
愕然とした私は、それ以上蕎麦を食べ進めることができなくなってしまう。
相変わらず漂っている天ぷらの匂いに、段々と耐えられなくなってくる。バッグからハンカチを出して、鼻と口を覆う。
「あの……すみません、私」
声を発したものの、ハンカチでこもって真木さんの耳には届かなかったらしい。彼は私の異変に気付かないまま、憎々しげに続ける。
「きみやチームのみんなには悪いことをしたと思うけど、恨むならうちの上層部より、もっと上……元を辿れば親会社の財前社長が利益ばかり追求するせいだ。まったく、こっちの都合なんてお構いなしなんだよ、あのワンマン社長は」
体調が傾いていたところに、言いがかりとしか思えない珀人さんへの暴言をぶつけられ、怒りやら悔しさやらで体中が熱くなってくる。
私は浅い呼吸を繰り返しながら、険しい顔で真木さんを見つめる。
「それ、本気でおっしゃっているんですか……?」
「もちろんだよ。前にも言ったけど、俺、財前親子が大っ嫌いなんだ。ごく普通の社内恋愛でセクハラだの不倫だの騒がれて、子会社に出向させられたこっちの身にもなってみてよ」