離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
同じ話を前に聞いた時は、真木さんが不倫をするなんてイメージは全くわかずに半信半疑だった。
でも、今の彼を見ていると、珀人さんが話していた方が真実だったのだと、もはや確信に近い気持ちを抱いている。
気持ちの混乱とたえず襲い掛かる吐き気、怒りによる興奮で、私は無意識に過呼吸になっていたらしい。
苦しい、と思った時には体が傾いていて、重力に耐えきれず、そのまま固い床に倒れる。
「財前さん……!」
真木さんが慌てた様子で駆け寄ってきて、他の客からも注目されてしまう。
「お客様、救急車を呼びましょうか?」
店員らしき男性の声が聞こえるも、私は答えている余裕がない。
「いえ、大丈夫です。彼女は部下なのですが、持病のせいで時折発作が起きてしまうことがあって……すみませんがタクシーを呼んでもらってもいいでしょうか。財前さん、ゆっくり息をして」
発作だなんて、どうしてそんな嘘を……。
私は困惑しながら呼吸を整えるのに必死になる。真木さんは私に付き添いつつ、席に店員を呼んで会計を済ませていた。
彼に借りを作るのは不本意だったが、体が言うことを聞かない。お金は後で支払おう……。
それでもなんとか深く息を吸えるようになってきて、真木さんもホッとしたように私の顔を覗く。会計を済ませて戻ってきた店員が、タクシーの到着を知らせてくれる。