離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「真木さん……?」

 思わずガバッと身を起こし、ベッドの上で彼に怪訝な目を向ける。

「秘書の彼女とは知り合いでね……。そろそろ入っておいでって連絡があったからお邪魔させてもらったよ」
「鞠絵さんと? ……どうして」
「彼女とは、素敵な出会いを提供してくれるアプリを通じて偶然出会って、まぁいわゆる体だけのオトモダチ関係を楽しんでたんだけどさ。何度目かの夜に彼女の本命の男について聞いてびっくり。俺が憎んでいる相手を一途に想っているって言うじゃない」

 真木さんは飄々とした様子で話しながら、ベッドに近づいてくる。

 彼と鞠絵さんがそんなにも深い関係だったなんて思いもよらなかった。

 でも、彼の話には納得できる部分も多い。珀人さんに対して、鞠絵さんが仕事上のパートナーとして以上の好意を抱いていそうだというのは、なんとなくわかっていたから……。

「過去に不倫ごときで過剰な不利益を被った俺は、間接的にその件に関わった財前社長に復讐がしたい。彼女は彼女で、高校の頃から一途に想ってきた財前社長を、妻であるきみから略奪したい。お互いの利害が完全に一致しているから、こうして協力し合ってているってわけ。どう? 理解した?」

 ギシッとスプリングを軋ませ、真木さんがベッドに腰を下ろす。

 逃げなければならないと頭ではわかっているのに、徐々に距離を詰めてくる彼の目を見つめ、かぶりを振ることしかできない。

 鞠絵さんの目的である〝略奪〟と、真木さんの目的である復讐〟

 それを同時に叶える方法を想像したら、恐ろしすぎて……。

< 149 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop