離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
初めて真木さんが慌てた様子を見せた。さすがの彼でも、警察のお世話になるのは困るらしい。
自分の保身しか考えられないなんて、本当に浅はかな人……。
「大袈裟なんかじゃない。あなたは目に見える傷だけを怪我だと思っているのかもしれないが、それは大きな間違いだ。自宅に侵入され、信じていた上司に裏切られた恐怖……。悠花が心に負った痛みは計り知れない。大切な妻を傷つけた相手を許すはずがないでしょう」
「や、でも、仕事なくなるのはさすがに……」
「知ったことではありません。お困りなら四季と一緒に地道に求職活動でもするんですね。彼女も秘書室はおろか、Zアドバンスに必要ない人材だと判断しましたので」
珀人さんが目線を送ったのは、開けっ放しになっている寝室の入り口。そこから微かにこちらを覗いていた鞠絵さんの肩がびくっと跳ねる。
真木さんもようやく観念したのか、立っている気力を失ったようにドスンと尻もちをつき、ガクッとうなだれた。
「あー、くそ……結局、共倒れだな」
彼は鞠絵さんに呼び掛けるようにそう言ったけれど、彼女はドアのそばで悔し気に唇を噛み、返事をしなかった。