離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 私と珀人さんはちょうど、ぶつかり合いながらも夫婦の絆を結び直している途中。その中で、私を大切にしようと、きちんと愛情表現しようと変わってきた珀人さんの態度が、会社で一番そばにいた彼女にも伝わっていたのかもしれない。

 だから、どうにかして壊したかった――。

 想像でしかないけれど、あの頭のいい彼女が道を踏み外してしまう理由が、それくらいしか思い浮かばない。

「……まるで、妻のきみより自分の方が俺を理解していると言いたげだな。彼女の好意には薄々気づいていてうまくあしらっているつもりだったが、一度きっぱり拒絶しておくべきだった。結果的に悠花を傷つけることになって、本当にすまない」

 珀人さんは握った私の手を自分の額に押し付け、後悔の滲んだため息を吐く。

「珀人さんのせいじゃありません。それより、鞠絵さんの話で少し気になったことがあるんですが、珀人さんのお母様が会いに来たというのは本当ですか?」
「……彼女はそんなことまできみに話していたのか。それに関しては事実だ」
「私との政略結婚にプレッシャーを感じていると打ち明けたのも?」

 まさかと思いつつも、問いかける。珀人さんはぐっと眉根を寄せ、とても不本意そうな表情になった。

「なんだ、その根拠のない話は。あの時はむしろ、きみについて惚気たと言っても過言ではないのに」
「の、惚気た? ……珀人さんが?」

< 155 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop