離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
にわかに信じられなくて、つい聞き返してしまう。
たとえば親しい友人である瀬戸山さんの前だったらまだ理解できるけれど、長い間疎遠だったお母様の前でというのが意外すぎる。
「ああ。……俺に偏った恋愛観を植え付けた張本人である母に、今自分が幸せだということを主張したかったのかもしれない」
「偏った恋愛観、ですか?」
どういう意味だろう。
問いかけるように彼の目を見つめると、珀人さんは切なげに微笑む。
「結婚してからの一年間……悠花が本音をぶつけてくれるまで、俺は非情な夫だった。今のように、素直に気持ちを表現するのが怖かったんだ。女性にとって、一途に愛情を向けられることは時に逆の結果をもたらす。母に、そう教えられたことがあったから」
逆の結果……。珀人さんのご両親が離婚していることを考えれば、お母様の言葉が表す意味はなんとなく伝わってくる。
強引な理屈だけれど、珀人さんにとっては一番身近な夫婦であるご両親がその通りの結末を迎えた実体験があるから、納得させられてしまったのかもしれない。
「でも、きみのおかげでもう大丈夫だ。どんなに不器用で不格好な愛でも受け入れてくれるきみの前でなら、俺はすべてをさらけ出せる」
「珀人さん……」
彼の手が、そっと私の頬を撫でる。優しい手つきと指先の温もりから、確かに彼の想いが伝わってきた。