離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「私、こんなに愛されていたんですね」
「ああ。十代の頃からしつこく片想いしていたくらいだからな」
冗談めかしてそう言った珀人さん。彼と一緒に母校の学園祭に行った日にも、似たような会話をしたことを思い出す。
あの時は彼が同じ気持ちだったなんて信じられなかったけれど、今はそれが嘘偽りのない真実であるとわかる。
「片想いじゃなくて両想いでしたよ。あの頃から」
「しかし、好きになったのは俺の方が先だと思う」
なぜか対抗心を滲ませた目で、珀人さんが告げる。本当にそうだろうか。私はしばらく黙り込んで過去の会話を思い出すと、激しく首を左右に振った。
「いいえ、私が先です」
「どうしてハッキリそう言えるんだ?」
「珀人さん、前に私を意識するようになったきっかけは三年の生徒会選挙の時期だと言っていましたよね。でも、私はその前からあなたを見つめていました」
そう言って、誇らしげに彼を見つめる。珀人さんはしばらく難しい顔で悩んでいたけれど、やがて観念したように苦笑した。
「どうやら、俺の負けのようだな。……しかし、過去は過去。今は俺の愛情が勝っている」
「いいえ、私です」
しばらく不毛な言い合いを続けた後、どちらからともなくクスクスと笑い合う。
夫婦関係が冷え切っていた頃が嘘のよう。でも、珀人さんはその頃も、態度に出さないだけで私を愛してくれていたのだ。