離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「大丈夫か?」
「はい。お話ししていただけなので……」
「しかし、またなにかきみを傷つけるようなことを吹き込まれたんじゃないのか?」
「大丈夫です。珀人さんがお聞きになった通り、私はあなたを信じていますから」
心配いらないというように、珀人さんにしっかり頷いてみせる。彼も納得したように頷き、それから鞠絵さんの方へ向き直る。
「悠花を傷つけるものは、誰であっても許さない。きみとは母校を同じくする同級生でもあるが、そんな繋がりすら断ち切りたいくらいだ。二度と俺たち夫婦に関わらないでほしい」
鞠絵さんは目を充血させながら何度か頷き、焦ったようにバッグから財布を出す。中から出した千円札をその場に置くと、忙しなく席を立った。
去り際に一度だけ私の方をちらりと見て、自嘲気味の笑みを浮かべた。
「妊娠したなんて嘘よ。ピルをもらいにいっただけ。幸せそうなあなたをどうしても傷つけたかったけれど、全部自分に跳ね返ってくる。……もう、こんな不毛なことはしないわ」
震える声でそう吐き捨てると、鞠絵さんは足早にカフェを後にする。彼女の姿が見えなくなると、ようやく肩から力が抜けた。
張り詰めた空気が緩んだところで、テーブルに珀人さんのコーヒーが運ばれてくる。