離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「そこは俺を信じてよ。目先の利益は減るかもしれないけど、子どもたちの間でアプリが流行すれば、ユーザーの絶対数が増える。目的がなんであれ、うちの会社のアプリで勉強するのが楽しいって思う子どもたちが増えれば、Zアドバンスにとって必ずプラスになるはずだよ」
真木さんはそう言って、優しく微笑む。こんなに話のわかる上司に出会ったのが初めてで、私は少し感動していた。
課金課金と言われすぎて、新しいアプリの開発に私自身がワクワクできない時もあったから……。
「ありがとうございます。それでは先ほどのご提案を反映させて、もう一度企画書を作り直してきます」
「ああ。きみならいいものができるって信じてるよ」
真木さんからの激励を受け、ぺこりとお辞儀をしてその場を離れようとした時だった。
「あれ、ちょっと待って」
なんだろうと思いながら、体を半分だけ傾けた状態で立ち止まる。
歩み寄ってきた真木さんは、突然私の顔周りをしげしげ観察し始めて、困ったように苦笑した。
「財前社長は意外と子どもっぽいことをするんだな」
「え? 夫がなにか……」
「一度、化粧室で鏡を見てきてごらん。部下のプライベートをとやかく言うつもりはないけど、見てるこっちがドキドキしちゃうから」
「……は、はい」