離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「以前、うちの会社で複数の女性社員と不倫関係になっていた真木という男がいてな。その件の懲戒処分で、子会社であるZアドバンスに出向しているんだ」
当時父からその話を聞いたが、かなり泥沼の様相だったらしい。実は俺自身も、女性社員に甘い顔を向ける真木の姿は何度か社内で見かけたことがあった。
同じエレベーターに俺と真木、そして真木の同僚の女性社員という組み合わせで偶然乗り合わせた際、真木がその女性にボディタッチをしながらコソコソと『今夜時間ある?』、『いい店知ってるよ』などとその女性に迫っている現場に出くわした。
女性は若く真木より立場が下だと思われ、断りたくても断りづらいという雰囲気を醸し出していた。俺は思わず、大きな咳払いをして真木を睨みつける。
『ここは会社だ。女性を口説く場所ではない』
真木はパッと女性から距離を取り『これは失礼しました』と殊勝に頭を下げる。
しかし、俺が先にエレベーターを降りた後、ふざけた様子で『怒られちゃった』と隣の女性に話しているのが聞こえ、彼が全く反省していないのは明白だった。
こうした彼の女性問題は社内のあちこちから集まっていて、真木には懲戒処分がくだることとなる。
当時課長職だったその任を解かれるとともに、子会社であるZアドバンスへ出向するよう、父の名で通達が出された。