離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
二日後の昼。俺は瀬戸山に【ランチミーティングだ】と呼び出され、彼が贔屓にしている寿司屋の個室にいた。
先日花屋で彼に電話した際、俺が口走った『離婚』のひと言が瀬戸山はずっと気にかかっていたらしい。
特上の江戸前握りが並んだ皿を前に、俺はここ最近の夫婦関係について、瀬戸山に一通り説明した。
食事をしながら話を聞いていた瀬戸山は徐々に深刻そうな顔つきに変わっていく。
「……まさかそんなことになっていたとはな」
「悠花はだいぶ前から我慢していたようだ。そこへ、俺が仕事を辞めるように勧めたのがトドメとなったらしい」
あの夜の口論を思い出し、小さくため息を吐く。
俺たちの間にできた溝は、いまだに埋まりそうにない。
「まぁ、俺もその発言についてはずいぶん唐突だなと思ったよ。女性が妊娠や出産でキャリアをあきらめる時代はもう終わっているだろう。本当は、他に彼女に仕事を辞めてほしい理由があるんじゃないのか?」
さすがは古くからの友人である。むしろ、妊娠だなんだというのは口実で、本当は別の理由で、悠花を家に閉じ込めておきたくなったのだ。