離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「Zアドバンスって、悠花さんのところか」
「ああ。しかし真木はこれまで総務にいたはずなんだが、ここ数年大人しくしていたこともあって、反省したとみなされたんだろう。悠花のいるアプリ開発課に異動してきて、彼女の上司になってしまった。しかも異動初日に、悠花と俺の結婚生活について彼女に探りを入れたらしい。……心配になるのは当然だろう?」

 財前にいた頃の真木は仕事ぶりこそ優秀だったそうだが、女癖の悪さは手が付けられないという噂だ。反省したと見せかけて、また新しい女性に手を出してもおかしくはない。

「なるほどな。……で、それを悠花さんに話したのか?」
「ああ。真木に隙を見せるなと」
「……それだけか?」
「だから、仕事を辞めたらどうかって」

 瀬戸山が突然腕組みをして、うーんと唸る。今の話に、なにか思うところがあるようだ。

 俺は脂ののった金華サバを口に入れ、瀬戸山がなにか言ってくれるのを待つ。

 しばらくすると、瀬戸山が組んでいた腕をほどいて俺を見た。

「正直なところ、その伝え方じゃ悠花さんが納得しないのも仕方ないと思う」

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