離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「ああ。社に戻ったら、俺たちの企画についてふたりでもっと詰めよう。上を納得させるいい案があるはずだ。課金にこだわるのは上層部か、さらに上の財前の方針かもしれないけど、向こうは現場を知らないから無理を言って来るんだ。そんな力に屈することはない」
真木は『財前』と口にする時だけ、わざとらしく俺を見た。どうやら俺を悪者にして自分の株を上げたいらしい。見え透いた罠だ。
「よろしくお願いします……」
悠花も夫を下げられたことに気づいているのだろう。同意はせず手短に挨拶を済ませ、俺の方に戻ってくる。
俺は迷わず悠花のの手を取った。二度と彼女に誤解を与えたないために、愛情表現を惜しんではいられない。
そのまま彼女の手を引いて車に戻ると、後部座席に並んで座る。走り出した車内で、悠花が戸惑いを含んだ目で俺を見つめた。
「どうしてあんな風に真木さんに絡むんですか?」
「そういえば、説明がまだだったな。あの男は以前うちの社にいたが、不倫の常習犯でZアドバンスに出向したんだ」
「えっ……」
悠花が口元を手で押さえて絶句する。そんな男だったとは思いもよらなかったらしい。
「だからこの間、きみの上司になったと聞いて不愉快になったんだ。俺はあの夜も隙を見せるなと言ったはずだが、なぜまた昼食を共にしていた?」
そう言って悠花の方を向くと、彼女は瞳を揺らして俺から目を逸らした。まるで、後ろめたいことでもあるかのように。