離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「先日も言いましたが、私にとっては上司なので、仕事の延長でランチをするくらいのことはあります」
「しかし、食事のペースは真木の方が遅いようだった。彼は仕事以外の思惑できみを追いかけてきて、後から同席したんじゃないか?」
「あの短い時間でそんなところまで見ていたんですか? ……食事のペースなんて人それぞれですし、珀人さんが勘ぐるようなことはなにもありません」
悠花はそっけなく言って、ぷいと顔を背ける。その態度に軽くショックを受けるが、ここで引き下がるわけにはいかない。
俺は、無関心な夫を卒業したいのだ。
「たとえ真木が善人だとしても、きみが男とふたりでランチする姿を見たくはない」
「えっ? 急になにを言って……」
「俺だって嫉妬くらいする。この間はその感情をうまく表現できずに、仕事を辞めろだなんて極端なことを言って申し訳なかったと思っている。きみの気持ちも考えず、身勝手だった。……すまない」
膝に両手をつき、悠花に深く頭を下げる。おそるおそる顔を上げた先の彼女は、困惑したように眉を八の字にしていた。
「なんなんですか、この間から……。急に花束を用意してみたり、こんな風に謝ってみたり」
「これまでの行動を反省している、とは思ってもらえないか?」
「そんな、無理です。私が離婚をちらつかせたから、慌てて取り繕っているようにしか見えません」
「そうか。……そうだよな」
思わず、フッと自嘲が漏れた。
虫のいいことを言っている自覚はある。一年かけて悠花の心を閉ざしてしまったのは、俺自身なのだ。