離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「ご無沙汰しています、財前社長」
「Zアドバンスで妻がお世話になっているようですね。しかし、こうした業務外の場では近づかないでいただきたい」
「は、珀人さん……」
悠花が咎めるような声を出し、俺のスーツを掴む。上司に失礼なことを言うなとでも思っているのかもしれない。
しかし、真木のような男に情けなど必要ない。
「やだなぁ、社長。奥様が大切なのはわかりますが、僕たちはあくまで上司と部下です。財前で起こしたとされている不祥事についても、大ごとにしたくないから認めましたけど濡れ衣ですよ。その証拠に、Zアドバンスに来てからの僕はなにもしていないでしょう」
この期に及んで濡れ衣とは、苦しい言い訳にも程がある。
彼に手を出された女性たちの証言は、あきれるくらいに集まっていたというのに。
「確かにあなたは会社からの処分に従って異動し、その後問題は起こしていないようです。しかし、だからといって信用を取り戻せたわけではない」
きっぱりそう言って真木を見据える。彼もまた無言で俺に挑戦的な眼差しを向け、ぴりぴりと緊迫した空気が流れる。
……言いたいことは言った。これ以上の長居は無用だ。
「悠花。行くぞ」
「は、はい。真木さん、失礼します」