離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「どっちを信じるかは自由だけど、もしも家庭内で財前社長にきみが……悠花さんが蔑ろにされているなら、俺はきみを助けたいと思ってる。それだけ、覚えておいて」

 珀人さんのことで悩む私に、仲間意識のようなものを感じているのだろうか。真木さんは励ますように言うと、私の肩にポンと手を置く。

 その瞬間、どうしてか不快感を覚え、ビクッと身を硬くしてしまった。

 珀人さんに、彼は悪い男だと刷り込まれているせい?

 下の名前で呼ばれたのは単に珀人さんと同じ苗字だから区別するためだろうし、肩に手を置かれるくらい、セクハラだと騒ぐほどの状況でもない。

 勝手に不快になる私がおかしいよね……。

「あ、ありがとうございます……。そろそろ、戻りましょう」
「そうだね。会議室で男女がふたりでいるからって、また濡れ衣を着せられたらたまったもんじゃない」

 濡れ衣というのが本当だったらとても気の毒な話ではあるけれど、もしも彼の言うことが嘘だとしたら、そこにはどんな意図があるんだろう。

 財前での不祥事を、Zアドバンスの人たちには知られたくないから、隠しているだけ? ……それとも。

 なんとなく真木さんと距離を置いて、早足でオフィスへと向かう。

 自分のデスクにたどり着いたと同時に、ジャケットのポケットに入れていたスマホが短く震えた。

 取り出してみると、珀人さんからのメッセージが一件。

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