離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
【来週の土曜日、一緒にここへ出かけよう】
その文章を読んでいる間に、リンクが載った新たなメッセージが追加される。
なにげなくタップしてアクセスしたサイトには、間違いなく私たちの思い出が詰まった場所が載っていた。
珀人さん、真剣に考えてくれたんだ……。
彼を試すように〝思い出の場所〟と指定したのは私だが、実を言うと、正しい答えなんてないのだ。
結婚から一年。珀人さんの記憶に夫婦の思い出の場所なんて存在していないだろうと思ったから、意地悪な気持ちでリクエストしたのだ。
だけど、珀人さんは自分なりに答えを出してくれた。予想に反して喜んでいる自分に気づいていたけれど、すぐに返事をするのはなんだか癪だ。
この選択が正解なのかどうか、珀人さんにも少しはドキドキしてほしい。
そう思った私は、既読だけつけて仕事の後に返信しようと決め、パソコンに向かった。
「悠花、まだか?」
「今出ます!」
十一月一週目、約束の土曜日。
着替えとメイクを済ませ、最後に洗面所の鏡の前でああでもないこうでもないと髪を弄っていたら、かなり時間が経っていたらしい。待ちきれずに珀人さんがドアの外から私を呼びに来た。