離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「……そっか。いい方向にいくよう願ってるけど、無理しないで。ご主人から聞いているかもしれないけど、俺、前にあっちの会社にいたんだ。そこで、ずいぶん財前親子には苦しめられたからさ」
「苦しめられた……?」

 親子、というのは、珀人さんと先代の社長であるお義父さんのことだろうか。

 珀人さんからは、真木さんが女性関係の不祥事を起こしてZアドバンスに来たと聞いているけれど。

「こないだカフェでも〝濡れ衣だ〟って言っただろ。財前さんならわかってくれると思うけど、俺は今ここでやってるみたいに、現場の社員と顧客のニーズをなにより大事にしたいタイプだから、利益重視の上層部からはどうしても睨まれやすいんだ。それでも自分の信念に従って仕事を続けていたら、ありもしない不倫をでっちあげられて、降格と左遷が決まった。それでも、ここできみたちと開発ができるようになってよかったけどね」
「そう……だったんですね」

 珀人さんの話とはまるで違う。どちらが本当なのだろう。

 真木さんは確かに、私たち制作現場にいる社員の意見に耳を傾け、言いにくいことでもしっかりと上に意見してくれる。

 おかげで、彼が異動してきてから、私たちはあきらかに仕事がしやすくなっている。

 以前から彼に相談していた、無課金ユーザーでも一生懸命に学習すれば課金ユーザーと同等の報酬が手に入る仕様の新しいアプリに関しても、ようやく上からのOKが出たと、先ほどのミーティング内で報告されたばかりだ。

 でも、珀人さんが嘘をついているとも思えないし……。

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