離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「私は卒業して九年……珀人さんは十一年。早いものですね」
「当時のこと、まだ覚えてる?」
「もちろんです。すごく充実した高校生活だったので」
松苑学園に通うのは、上流階級の家柄に生まれた生徒ばかり。私はその端くれという感じだけれど、内面的にも高い志を持った人たちが多かったので、学校生活はとてもいい刺激になった。
中でも、珀人さんと一緒に在籍していた生徒会活動にはたくさんの思い出がある。
彼は生徒会長を務めていて、学校生活をよりよくするため精力的に活動していた優等生。書記をしていた私には雲の上の存在だったけれど、一方的に憧れていた。
でも、彼の隣にはいつも綺麗な先輩がいて……。
「あの頃、珀人さんは副会長の鞠絵さんとよく噂になっていましたね。美男美女なのでお似合いだなと私も思っていました」
「四季と? 根も葉もない噂とはこのことだな」
「本当に、なにもなかったんですか?」
「当たり前だろう。俺はあの頃から悠花ひと筋だ」
ハンドルを握ったまま、しれっと珀人さんが言う。あり得ないと思いつつも、心臓が大きくジャンプした。