離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「さ、さすがにそれは無理がありますよ。同じ生徒会にいたとはいえ、そんなに接点があったわけじゃないですし」
「恋というのは、ささいなきっかけで落ちるものだ」
「じゃあ、そのささいなきっかけってなんですか?」
「俺が三年の時の生徒会選挙だ」
どうせ、離婚回避のための後付けだろう。そう思って尋ねたのに、間髪入れずに返事が返ってきて驚く。
珀人さんが三年の時の選挙……。そう言われて、忘れかけていた記憶の扉が開く。
自分にも他人にも厳しい品行方正の珀人さんは、他の生徒に嫌われることも厭わず、生徒会長としての役割をまっとうしていた。
その行動はとても立派なものなのに、彼をやっかむ生徒が少数だが存在していた。
そして三年時の生徒会選挙において、珀人さんはその生徒たちに嵌められてしまったのだ。
「選挙管理委員会の中に珀人さんをよく思わない人たちがいて、珀人さんがまるで不正をしたかのように、票数を改ざんした件ですね。あれは今思い出しても腹が立ちます」
彼の名前が書かれた投票用紙は生徒の総数より多く、なにかの不正があったのは明らかだった。
その時、一番に疑われてしまったのは珀人さんで、会長になりたいがゆえに不正を働いたのだろうと、彼を責める人が圧倒的に多かった。