離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「懐かしい……」
「ああ。ほとんど変わっていないな」
胸が高鳴る中、珀人さんは学校の敷地と隣接した場所に設けられた、職員や来賓用の駐車場へと車で入っていく。
誘導員の指示に従って駐車を済ませると、ワクワクしながら車を降りた。
「本当に来ちゃいましたね」
「悠花、手を貸して」
「あの……学校の中でも繋ぐんですか?」
「家を出る前にそう約束したはずだが」
手を出すのを躊躇する私に、珀人さんが不満そうな顔をする。
「で、でも、知り合いの先生や卒業生に会うかもしれませんし、なにより生徒たちの教育上よくないのでは?」
「大切な人と手を繋いで同じ景色を見たいと思うことの、なにが悪い? きみに三歩後ろを歩かせるよりはましだろう」
「それはそうかもしれませんけど……」
どうやら、なにを言ってもあきらめてくれなさそうだ。
おずおず手を出すと、迷わずギュッと握られる。繋いだ手にあまり意識を集中させないようにしながら、学園の門に掲げられた【松苑祭】のアーチの下をくぐる。
中に入ると校舎の外にもイベントや出店がある。ラインナップこそ昔とは違うけれど、にぎやかな雰囲気は当時とそう変わっていない。
生徒の模擬店だけではなく一般企業の出店まで多彩にあるのは、卒業生や保護者のコネクションが多方面にあるからだ。