離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「見て、珀人さん。あのお店、瀬戸山園って書いてあります」
「ミニ観葉植物の販売か……。瀬戸山のやつ、商魂たくましいな」
「卒業生として、学園祭を盛り上げるお手伝いがしたかったんじゃないですか?」
「いや、あいつは意外と抜け目のない男だ。ミニ観葉植物なら女子高生の心を掴み売り上げを見込めると、冷静に計算したに違いない」

 珀人さんは瀬戸山さんの話になると、少し子どもっぽい物言いになる。

 彼との付き合いはこの松苑学園から始まっているから、つい高校生に戻ったような気持ちになってしまうみたいだ。

 なんだか微笑ましく思えて、クスッと笑いがこぼれる。

「……久しぶりだな」
「えっ?」
「きみがそうやって笑ってくれるの。本当に、久しぶりだ」

 珀人さんは噛みしめるように言って、手を握る力を強くする。心から安堵したような眼差しと重なる手のひらの熱さに、胸がぐっと詰まる。

 珀人さん、本当にうれしそう……。

「あの……生徒会室に行ってみませんか? 学園祭の時っていつも忙しくて自分たちはどこも回れないから、激励になにか差し入れを買って行くのもいいかも」

 単に思い出をなぞりたい気持ちが半分、もう半分は、自分たちの経験を生かして後輩たちの役に立ちたいという思いで、珀人さんに提案する。

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