離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
『子どものデートはおしまい』って、そういう意味だったんだ。
到着したエレベーターに乗り込み、最上階の十八階を目指す。
珀人さんが無口なのはいつものことだけれど、今は沈黙が続けば続くほど自分の鼓動のを意識してしまい、居たたまれない。
必死で話題を探し、気になっていたことを彼に問いかける。
「私が酔いつぶれてしまった後、珀人さんはどうしたんですか……?」
「すぐに自宅に送り届けたよ。きみが気にすると思って、ご両親には細かいところまでは伝えていないが」
「すみません、お手数おかけしました。実家暮らしだったのに両親に叱られた覚えがないのは、珀人さんがうまく伝えてくださったからだったんですね」
そう言って微笑みかけたら、真顔の珀人さんがジッと私を見つめてくる。
私、なにか変なことを言った……?
「実家暮らしだったほうが安全だったかもしれないな」
「え……?」
「今、きみを叱れる立場なのは夫の俺くらいだろうけど、その夫に酔わされて帰りが遅くなっても、誰も心配してはくれない」
意味深な発言にドキッとした直後、目的の階に到着したエレベーターのドアが開く。
冗談だよね……?
珀人さんはあまりそういうことを言う人ではないと知りつつ、自分に暗示をかけるように言い聞かせる。