天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

九章*王子ローレンス、魔導師奪還を企む

 オレは王宮内のホールで、エリカがやってくるのを待っていた。

 今日はエリカが王宮内で王子妃教育を受けてから、神殿で大聖女の勤めをおこなう予定になっている。神殿に行く前のエリカと待ち合わせ、ひとときの逢瀬を重ねるのがオレの最近の楽しみだ。

 ホールに繋がる廊下の先に侍女を連れたエリカが見える。白い大聖女の制服を着たエリカは、清廉で可憐だ。オレに気がつくとエリカは手を挙げ小走りで駆け寄ってきた。

 その姿は、次期王子妃としてはマナー違反で付きしたがっている侍女は眉を顰めた。

 しかし、オレのためにマナーを破る姿は愛らしく注意しようとは思えない。

「ロー。会いたかった……!」

ピンク色の瞳がウルウルと潤み、オレを上目遣いで見上げてくる。あまりにも幼気で可愛らしい様子に、もっと頼ってほしくなる。

「エリカ。なにか困ったことはないか?」

 尋ねるとエリカは、困ったように微笑んだ。

「ううん。大丈夫!」

 平気そうに見せてはいるが、最近エリカが疲れていることはわかっている。大聖女として務めも増え、また王子妃教育もあり、両立が大変なのだ。
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