天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
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その後、シオン様は薬草と魔法の研究者として認められることになった。
下級魔導師だったシオン様は、中級を飛び越え上級魔導師に認定されることになったのだ。
また、シオン様が管理する魔塔は研究施設として注目されるようになり、ほかの研究者たちからも共同研究を求められるようになった。
民間人向けのわかりやすい本の出版や、新しい魔導具の開発までおこない、めざましいほどの活躍である。漆黒魔術師と蔑まれてきたのが嘘のようである。
(シオン様の実力がみんなに認められてよかったわ~!)
私はご満悦である。
逆にローレンス殿下の立場は危うくなっているようだ。シオン様の論文内容から、ローレンスが過去に書いた論文は実はシオン様が書いたものではないかと囁かれ始めたのだ。
シオン様にも問い合わせがあるようだが、シオン様はかたくなに口を噤んでいる。
(原作でもそうだったけど、義理堅いというのか……。そこもシオン様の魅力なのだけれど……)
ローレンス殿下のほうは疑惑を向けられまいと必死の様子で、「研究はやめたのだ」と吹聴しているらしい。
(シオン様に関わってこなければ、どーでもいーんだけど……)
私はひとつため息をつく。
(そう簡単にはいかないわよねぇ……)