天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
(エリカが成長したところで、ヒーローが交代したってこと)
シオン様はローレンス殿下に厚い信頼を寄せている。ローレンス殿下もエリカと同じく黒髪を差別しなかったからだ。シオン様にとって、ふたりだけが理解者だった。
シオン様はそのため、ローレンス殿下が王太子と認められるために尽力する。シオン様のさまざまな功績は、ローレンス殿下とエリカの手柄とされた。そもそも、黒髪のシオン様がなにをしても正当な評価は受けられない。それならばと、ふたりへと譲ったのだ。
(それなのに! ふたりはシオン様への恩を仇で返すのよ!!)
エリカは、シオン様の思いを華麗にスルーし、ローレンス殿下の愛に応え、王子の婚約者となる。
ローレンス殿下とエリカは、婚約破棄を恨んだ悪女ルピナの罠にはまり最大のピンチを迎えるが、シオン様がふたりの罪を被り宮廷から追放されるのだ。
帰る家のないシオン様は、失踪する。その後、遺産をふたりへ譲ると遺書を書き、自死してしまうのだ。
ふたりは、シオン様が残してくれた遺品を利用して、王太子と王太子妃となるというハッピーエンドだ。
(これがハッピーエンド?)
私は憤った。たしかにエリカサイドとしてはハッピーかもしれない。だが、その幸せは、シオン様の犠牲の上に成り立っているのだ。
(王太子になったんだから、せめてシオン様の名誉を取り戻してくれればよかったのに!! 回想して心の中で感謝して終わってしまうのよ……)
いくら当て馬役だとしても、あまりにも救われないではないか。