天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
(エリカとローレンス殿下は、シオン様の意図に気がつかず、裏切られたとショックを受ける。そのおかげでふたりの愛の絆は深まり、エリカの神聖力は安定。結果、『聖なる花園』は力を取り戻すのだけれど――)
雨降って地固まる。シオン様の狙いどおりの結末になるのだが。
(ローレンス殿下とエリカも神官たちと一緒になってシオン様を断罪するのよ。切なすぎるでしょ?)
シオン様が望んだ結果とはいえ、あまりにも酷すぎる。
その混乱時に、エリカとローレンスの政敵たちの不祥事が明るみに出て、ローレンスは彼らを一掃する。でも、それらは、すべてシオン様がエリカたちのために、仕組んでおいたことだった。
(シオン様が亡くなってからすべての事実が明らかになるのだけれど……。絶対にそんなことはさせないわ!!)
私はフンと鼻から息を出す。
(私がルピナで良かったわ。私が新大聖女に名乗りをあげなければ、エリカは追い詰められないし、シオン様も罪を被ることはないのだから)
このあとに起こる凶事についても対策はしてある。
これから、神殿に雷が落ちる予定だから避雷針をつけさせた。モンスターの侵入に備え、王国警備兵の強化をセレスタイト公爵が進言している。
セレスタイト公爵家でも、独自に騎士団の強化に努めてきて、王都から離れた領地でも対策を練ってある。
(でも、悪女であるルピナがなにもしていないのに、『聖なる花園』の花が枯れているの? ルピナが手を下さなくても、エリカは恋に乱れてしまうのかしら?)
私は疑問に思いつつ、傍観していた。
シオン様に害がなければ別にどうでもよい。
ぼんやりと窓の外を見ていると、大きな音がして稲妻が神殿へと落ちた。
(! 原作どおりね。でも避雷針があるから大丈夫でしょう。魔塔にも避雷針はつけてあるし、私が心配することはないわね)
私はカーテンを閉め、ベッドへと潜り込んだ。