天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
(でも、ルピナに出会ってからそれも変わった。ルピナをはじめ、孤児の子供や聖獣たちも黒髪を気にせず触れてくる。彼ら以外にいないと思っていたのは思い込みだったのだ)
黒髪で生まれた私のことを、周囲は忌み嫌い誰も触れようとしなかった。
(だから、私自身、他人に触れてはいけないと思っていたが、そんな思いもいつしか消えていたな)
今まではローレンス殿下から肩を叩かれても、たたき返したことはなかったのだが、今回は自然とたたき返す。
すると、ローレンス殿下は驚いたように目を丸くした。
「……。シオン、なんだか雰囲気が変わったな」
「そうか?」
「あ、ああ」
戸惑うローレンス殿下とともに、玉座に座る国王陛下の前に出る。
「シオン・モーリオン。よく来た。無事に魔塔から解放されたことを祝福する」
国王の言葉に頭を下げ、私は返事をした。