私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜
スッと手が伸びてきた、トンッと壁に手をついて私と取り囲むみたいに。

背の高い七瀬くんが私を捕らえるのなんか簡単で。

「臨場感、いりますよね?」

「え…」

「お母さんに勘繰られたら困るじゃないですか」

ぐっと顔を近付ける、あと数センチの距離にドクンッと心臓の奥の方から鈍い音が聞こえた。

「お金もらえるならどんな依頼でも引き受けます」

後ろは壁、死角になってることをいいこ追いつめられる。

近くで見れば見るほどキレイな顔してる。

メガネの奥の瞳は艶っと色づき…

一度目が合えばもう逸らせない、惹きつけられるみたいに七瀬くんと目を合わせて。

「これ以上のことも、何でもしますけど?」

くすっと意地悪な笑みを浮かべてー…

「ふざけないで!!」

どんっと七瀬くんの体を両手で押して突き放した。


何それ、何よそれ…!

そんな風に思われてたんだ!!


「私はそんなこと求めてないから!」


急いで婚約者を取り繕うとしてた。

それにはお金を払って雇うのが1番だと思ってた。


だけどお金を払ってそんなこと考えてない、お金を払って七瀬くんとどうとかなんてー…!


「やっぱフリはしなくていいです、この話はなかったことで!」
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