私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜
「ありがとうございます!じゃあ契約成立ってことで」

こんな形で婚約者って出来るものなんだね、あくまでフリだけど。

でもこれで少し気がラクになった。
これでなんとかお母さんの元へ挨拶に…

「だから何でも言ってください、何でもしますから」

「何でもってただその時だけしてくれたらいいだけだからね!それ以上は求めてないよ!」

「そうですか?さみしくなったらなんだってしますよ?」

「だからそんなの…っ」

ふっと近付いて、下からふわっと一瞬で私の前に近付いた。


その瞬間、七瀬くんしか見えなくなって。



息が、かかる。



ほろ苦いコーヒーの香りがする。


さっきまで飲んでたコーヒーの香りが、七瀬くんの息が、私の唇に…


「待って!お金払わないからね!?」

どんっと突き飛ばした。

ゆ、油断も隙もない!何しようとしてんの!?

「今のはオプションで、そんな雰囲気かと思いまして」

「どんな雰囲気!?違ったよねっ!!」

やっぱり不安しかないかもしれない…
フッて不敵に笑う七瀬くんを見たら。

―ブブッ

デスクの上に置いたスマホが鳴った。これはたぶんLINE、すぐに開いて確認をした。

誰だろう?十々子かな、それくらいしか私に連絡してくるのは…

「……。」

「衣咲さん?どうかしました?」

「七瀬くん…」

「はい、なんですか?」

お母さんへの挨拶の前にまだこれがあった。

「今週暇?」

「今週?暇ですけど…」

まずはここから…!

「私の姉に会ってほしいの!お金は払うから!!」
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