私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜
「でもその衣咲さんの優しいところがみんなを助けてるんですよね」

……。

そんなふうに言ってくれるんだね。

優しいのは七瀬くんだよ。
言い方が優しいよね、七瀬くんは。

あの日の夜もそうだったから。


だからそれしかないとしても、それが嘘だとしても嬉しかった。


「へぇー、楓はちゃんと衣咲のことわかってるのね」

お姉ちゃん!!!
呼び捨てしないで、せめて楓くんって言って!

「もちろんですよ、だって僕は衣咲んさんの婚約者ですから」

嘘の、だけど。

でもまっすぐ前を見て、スーッと背筋を伸ばして。隣に座ってるのが七瀬くんでよかったって思っちゃった。

お金を払って繋いでる関係だけど。

「お母さん心配してたよー、衣咲にそんな人本当にいるのかってー」

そして鋭い母!!!
見抜かれてる、すごい見抜かれてる…!

「いやぁー、衣咲んさん僕のこと全然話してなかったみたいで」

キャキャキャッて笑って返してる七瀬くんも七瀬くん…さすが営業部、営業トーク得意過ぎる。
私だったらもうボロ出てたと思う、七瀬くんに任せた方がいいんじゃないかって思えてきた。

「まぁ心配にもなると思うんですよね、僕の方が衣咲さんより年下なんで頼りないんじゃないかって…」

「え、そうなの…?」

お茶をひとくち飲もうとしたお姉ちゃんの手が止まった。ピタッとコップに口を付ける寸前で止まった。
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