私の婚約者は、嘘ばっかり〜クズだけど優しい彼〜

Lie3.)

お弁当が1つ無駄になっちゃった。
張り切ってスープジャーなんか持ってくるんじゃなかった、邪魔で仕方ない。

帰ったら食べられるかな?
さすがにまずいかなぁ、保冷剤あるしいいかな。
仕事が終わったらすぐ帰ろう、早く帰ってこのお弁当を食べないと傷んじゃうね…



「衣咲さん、なんで今日はお弁当持ってきてくれなかったんですか?」

ちょっと遅くなってしまった仕事終わり、エレベーターに向かった歩いて…もう人の少ないオフィス、会わないだろうと思ってた。

「待ってたんですけど」

廊下の壁に寄りかかりながら、たぶん私を見てる。だけど顔が見られない。

サッと持っていたランチトートを内側に隠した。

「あ、ごめん今日寝坊しちゃって…」

嘘をついた。声が震えるかと思った。

「じゃあ明日は作って来てくれますか?」

「ど、どうかな~…急に忙しくなって!仕事立て込んでて…」

逃げるように七瀬くんの前を通り過ぎる。
足早にエレベーターに向かって乗り込んで、気付かれる前に離れないと見透かされる前に立ち去らないと。

顔を見られたら伝わってしまうんじゃないかって…

「あ、これからは他の人に作ってもらったら!?」

だから最後は笑って返した。

「七瀬くんなら作ってくれる人たくさんいると思うよ!」

これで終わり、ここで終わり。
別に1つや2つ作るのなんて変わらない、明日から1つに戻せばいいだけ。

だから寂しいことなんてない。


笑って終わりにしよう。


「私より上手い子なんてたくさんいるから!」

閉まるのボタンを、力が入って何度も押した。

早く閉まって、早くここからー…


「俺は衣咲さんのがいいです」
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