冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
「……俺だって、女の体に一度も触れたことがないわけではないんだ。」

アルベール皇子はふっと視線を伏せ、どこか寂しそうな顔をした。

「スクールに通っていた頃のことだ。夜中に忍び込んできた侍女に、体を弄ばれたことがある。」

「えっ……⁉」

思わず息を呑む。

まさか……皇子は、童貞ではなかったの?

けれど殿下は静かに首を振った。

「交わりはしなかった。……だが、体を触れられ、欲を煽られ……行為が終わった時、ただ虚しさだけが残っていた。」

その声音は淡々としているのに、どこか深い痛みを含んでいた。

「俺はその夜、一睡もできなかった。ああ、これが“愛のない行為”というものかと。抱いたのは欲望だけで、心は何も満たされない。ただ、汚されたような気持ちになったんだ。」

私は胸を押さえた。

冷徹と呼ばれる理由が、少しだけ分かった気がする。

殿下は拒んでいたのではない。真剣に愛せる相手を求めていたからこそ、誰にも触れられなかったのだ。

「だから俺は誓った。次に触れる時は……心から愛しいと思える女でなければならない。」

その言葉に、視線が私へと注がれる。

胸が熱くなり、息をすることさえ忘れてしまう。
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