冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
もし、結婚初夜に失敗でもしたら、それは国家の恥となる。

しかも皇子がその屈辱を気に病み、夜の営みを拒むようになれば、王家の跡継ぎはどうなるのか。

王宮の重鎮たちの胸に、不安が膨らんでいった。

そこで動いたのが、侍女長マルグリットである。

「必ずやアルベール皇子がお気に召す女を探し出してみせます。」

その一言に、周囲は安堵の息をついた。

だが、彼女の眼差しは鋭かった。

長年仕えてきた経験から、誰が殿下に心を許されているかを、見抜いていたのだ。

それからというもの、私は奇妙な視線にさらされるようになった。

廊下を歩けば背中に刺さる気配。

洗濯場にいても、台所にいても、誰かが私を観察しているような落ち着かなさがつきまとう。

理由は簡単だった。

アルベール皇子が侍女に声をかけることなど、滅多にない。

令嬢たちにも無関心を貫く殿下が、ただ一人、私にだけ言葉を向けてくださるからだ。
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