冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
そしてついに、マルグリットの目が私に向いた。

「エリシア。ちょっと来なさい。」

「はい……」

廊下の片隅、人目のない場所に呼び出された私は、心臓がいやに早く打っているのを感じていた。

侍女長の声は低く、そして鋭かった。

「アルベール皇子の童貞を奪いなさい。」

「えっ……⁉」

耳を疑った瞬間、体が揺れるほどの衝撃が走った。

皇子の……童貞? 私が?

「なぜ……私に?」

震える声で問うと、マルグリットは冷ややかに言い放った。

「簡単なことです。殿下はおまえにしか心を許していない。」

「うっ……」

その言葉に、思わず喉が詰まった。

分かっていた。ずっと前から気づいていた。

殿下が他の誰とも目を合わさないのに、私にだけは言葉をかけてくださることを。

けれど、それは恋と呼んではいけない淡い憧れで、決して現実にはならないと胸に押し込めてきたのだ。
< 5 / 30 >

この作品をシェア

pagetop